天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

木犀

相模・大山にて

 モクセイ科の常緑小高木。雌雄異株。中国原産だが、日本にあるものは雄株のみ。よって実を結ばない。黄色の花のキンモクセイ、白色の花のギンモクセイがある。


      木犀の香に昇天の鷹ひとつ
                 飯田龍太
      行きすぎて金木犀は風の花
                 木村敏
      山麓の百年の家銀木犀
                 坪内稔典


  木犀のせつなきまでに匂ふひる短きときを窓にまどろむ
                       木俣 修
  物音も立てぬ一日と寂しめり木犀の花夜の卓にこぼるる
                       大西民子
  木犀のにほふ野を来てかの丘に夭死のむくろ焼きし日思ほゆ
                       岡野弘彦
  身を浄くたもつよろこびしくしくに秋の夜ふけて匂ふ木犀
                       穂積 忠
  葉をもるる夕日の光近づきて金木犀の散る花となる
                       佐藤佐太郎
  朝戸繰りて金木犀の香を告ぐる妻よ今年のこの秋の香よ
                       上田三四二
  まま母のなほ若くして木犀の香をなげきたり吾をはぐくみて
                       馬場あき子
  アトリエをかこむ木犀匂ひそめあきしことなき窓あけありぬ
                       蒔田さくら子