天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

ウサギ

二宮町吾妻山にて

 ウサギ目ウサギ科の総称で種類が多い。大きく、ノウサギ類とアナウサギ類に分ける。肉用、毛用、毛皮用、兼用、愛玩用などの分類も可能。日本白色種は、毛皮と肉との兼用。古くはオーストラリア、マダガスカルを除く全世界に分布していた。


  冬の田に兎追ひ落し撃つ砲の音はひびけり雪照れる山に
                       隅田葉吉
  ひそひそと青草のなかにひそみつつ耳うごかしてゐる兎なり
                       前田夕暮
  朝々に霜にうたるる水芥子となりの兎と土屋とが食ふ
                       土屋文明
  白きうさぎ雪の山より出でて来て殺されたれば眼を開き居り
                       斉藤 史
  芽ぐむもの青めるものに顔寄せて若き兎がひとつひとつ嗅ぐ
                       斉藤 史
  ほのぼのとうさぎのみみの立ちをればくれなゐさせる耳の穴あはれ
                       小池 光
  採血の終りしウサギが量感のほのぼのとして窓辺にありし
                       永田和宏

 二宮町吾妻山には、小動物園があって、かつては鹿、孔雀、インコ、アライグマ、ウサギ など種々の動物を飼っていた。ところが、どこに行ったか次第に種類が減って、今日現在では、ウサギしか残っていない。


      曽我兄弟駒止石や笹子鳴く
      足音に蛇穴に入る山路かな
      蜘蛛の囲の虫の亡骸日に揺るる
      首筋に剃刀当つる冬隣

            
  ウサギのみ檻に残され日向ぼこ名のみとなりし小動物園は
  寝そべれる山路の蛇は知らぬ顔枯葉落葉に地団駄を踏む
  蜘蛛の囲に掛くる亡骸多ければ主しづまる誇れるごとし
  ところどころ虫に喰はれて色まだら桜紅葉は美しからず
  さはがしき電車の音にかさなりて山のふもとの梵鐘の音