天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

大磯城山公園の紅葉

城山公園にて

 この公園の沿革については、以前にも紹介したと思うが、大略次のような経緯である。
この地には縄文時代から人が住んでおり、土器が出土、横穴古墳も多数見つかっている。公園の地域は、明治31年(1898年)、三井財閥本家の別荘地となり、「城山荘」、「降鶴亭」、茶室「如庵」などが建てられた。財閥解体後は土地が三井家の手を離れ放置されていたが、公園化計画が持ち上がり、平成2年(1990年)に神奈川県立大磯城山(じょうやま)公園として開園した。
大磯は、万葉以来、「こゆるぎの磯」として知られた歌枕であり、多くの和歌に詠まれている。西行の名歌、「こころなき身にもあはれは知られけり鴫立つ沢の秋の夕暮」は、あまりにも有名。他の例をいくつかあげておく。郷土資料館の廊下に和歌の一覧がおいてある。


  こよろぎの磯より遠く引く潮に浮かべる月は沖に出にけり
                       兼好法師
  見るが内に磯の浪わけこよろぎの沖に出でたる海士の釣り舟
                       細川幽斎
  こよろぎのいそぎなれたる海士の子はたつ年波も知らずやあるらむ
                       香川景樹
  相模の海大磯のいそのみち潮に赤裳ぬらして遊ぶ子らはも
                       正岡子規

  
 城山公園の紅葉も見所があり、夜間のライトアップが実施されている。


  紅葉を映せる池に棲む鯉の白きは肌にもみぢ染めたり
  あぎとひの静かなりけり紅葉を映せる池のま白き鯉は

<追伸> この2首を次の1首にまとめておきたい。

  秋ふかみ池の底ひにあぎとへる鯉の白きはもみぢ染めたり