天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

湯河原・万葉公園(1)

万葉公園の入り口

 BS・TBSの放映「相模の小京都  湯河原」を見て刺激され出かけた。今までいく度も行っているのだが、今回は万葉公園を丁寧に歩くことにした。例えば、今まで一度も試みたことのない足湯に入った。湯河原に逗留した文人たちを紹介した立札のひとつひとつを見て歩いた。今日は先ず、彼らの詩文をデジカメに鮮明に撮れたもののみメモしておこう。


     道ばたの墓なつかしや冬の梅     芥川龍之介
     どうどうと山雨が嬲る山紫陽花    長谷川かな女
     天の川あす釣りに行く沖の見え    五所平之助
     遠河鹿ひびきて冷ゆる夜の肌     西島麦南
     春の海観音丸に鯛釣るる       獅子文六
     秋の蚊をあはれむ我れや旅に病む   岡本綺堂
     汐ざゐのいづくへ月の蜜柑山     黛 執
     声かけて欲しい椿の青蕾       金尾梅の門
     
   湯ケ原の渓谷に向った時は     さながら
   雲深く分け入る思があった        国木田独歩

 この詩碑が独歩の湯の入口に立っている。


  足柄の土肥の河内に出づる湯の世にもたよらに子ろが言はなくに
                   万葉集東歌・読み人知らず

 この歌碑が万葉公園の入口に立っている。選・佐佐木信綱、筆・竹内栖鳳である。


  忘れずよ右のつかさの袖触れし花たちばなや今馨るらむ
                       亀山院御製
  たそがれに咲ける蜜柑の花一つ老いの眼にも見ゆ星のごとくに
                       谷崎潤一郎
  箱根よりいかづち雨の移り来て春しづもれる峡をとよもす
                       吉野秀雄
  ただひとり湯河原に来て既に亡き独歩を思ふ秋の夕暮れ
                       吉井 勇
  光りつつ沖を行くなりいかばかりたのしき夢を載する白帆ぞ
                       与謝野 寛
  吉浜の真珠の荘の山ざくら島にかさなり海に乗るかな
                       与謝野晶子
  湯ケ原をおしつぶさむとするばかり山の迫れる南の相模
                       平野万里
  木がくりに滝の音とよむ万葉人来遊ぶらむと思ひつつ歩む
                       佐佐木信綱


  何分の発車か聞きて煙草吸ふ湯河原駅のバス停車場