天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

師走の城ケ島

ウミウの岬

 江ノ島で見かけた鵜の群から、城ケ島のウミウの岬が気になっていた。もう来ているだろうと思って行ってきた。城ケ島は、ご無沙汰しているうちに、観光客の数が増えているように感じた。うれしいことだ。白秋記念館も健在である。北原白秋が三浦三崎に滞在した期間は、わずか9カ月足らずであったが、「城ケ島の雨」の作詩によって、ずいぶん観光に貢献したことになる。詩人冥利につきよう。岬の道沿いの水仙が、はや咲き始めていた。
 ウミウのコロニーには、まだ鵜の数が少ない。例年なら、崖全体にゴマ粒をばらまいたようになるのだが。


     白鷺の頭隠せる芒かな
     水仙の花咲きおもる岬かな
     濡れ落葉ずるりとすべる岬道
     木隠れに目白さざめく師走かな


  空に鳶磯に白鷺鶺鴒のあそぶ師走の朝城ケ島
  馬手に富士弓手に大島うかび見ゆ雲去りがての相模の空に
  釣舟をあまたうかべる海坂のかなたの空に雪の富士見ゆ
  岩食める白波の間をカヌーゆく朝日まぶしき海城ケ島
  雨降りし後の岩場の黒ければまして美し朝の白鷺
  朝光に鋭きまなざしの白鷺は首を縮めて足垂らし飛ぶ
  鶺鴒の足に寄りくるさざ波の穂先きらめく朝日なりけり
  さざ波の洗ふ渚の石叩き身の軽ければ足跡ならず
  東風吹きて朝日のぼればぬばたまの羽根ひろげたり海鵜の群は
  日がのぼり油びかりの海坂を沖よりもどる三羽鵜の鳥
  道なりに青株植えし水仙の花咲きそむる海鵜の岬
  岸までの片道料金二百円天麩羅油に走る「白秋」  
  白き足みな上向きに並べたり道の辺に売る三浦大根
  白秋が歌書きしるす水茎の黒うるはしき短冊はあり
  帆の形(なり)の石碑立ちたり白秋の筆跡のこす「城ケ島の雨」
  衰へし視力くやしみ白秋は歌碑に触れたり見桃寺の庭
  頬痩せて眼鏡かけたる愛弟子の似顔絵描きしある日白秋
  白秋の跡を慕ひて宮柊二歌碑を建てたり島の岬に
  道の辺の店先なれば砂ほこり身にかぶるらむ烏賊一夜干し