天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

鶺鴒

江ノ島にて

 セキレイ科。わが国には、黄鶺鴒、背黒鶺鴒、白鶺鴒などが生息。たえず長い尾を上下に振るので、庭たたき、石たたき などと言われた。
 最近、特に目につく。藤沢の街路、江ノ島の磯、城ケ島の浜辺 など。以前は、珍しいと思ったものだが、いまや雀ほどの関心しかない。俳句では秋の季語。

     鶺鴒や水の流転はとこしなへ     三橋敏雄
     踏み濯ぐ湯原乙女に石叩       吉田丁冬


  さらぬだに霜がれはつる草の葉をまづうち払ふ庭たたきかな
                        藤原定家
  せきれいは尾を振るゆゑに曇りふかき川原の石に見えて啼き居り
                        島木赤彦
  鶺鴒の来鳴くこのごろ藪柑子はや色づきぬ冬のかまへに
                        伊藤左千夫
  行く水の目にとどまらぬ青(あを)水沫(みなわ)鶺鴒の尾は触れに
  たりけり                  北原白秋           
  たまかぎる夕映生るる石ひとつわが鶺鴒(いしたたき)石たたきゐて
                        山中智恵子
  鶺鴒の卵灼けつつある河原 娶りてとこしへの孤独得よ
                        塚本邦雄
  若草はひばりを隠しはつなつの心にわれは鶺鴒を飼う
                        佐佐木幸綱