天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

蛸(たこ)

江ノ島水族館にて

 漢字では、章魚とも表記する。軟体動物頭足綱のうち、八腕形目、コモリダコ目の総称。日本近海には、約40種いるという。マダコ、ミズダコ、イイダコなどはなじみ深い。チヒロダコ、クロダコなどのように数百から数千メートルの深海に棲む種類もいる。タコを食べる国は、日本以外にヨーロッパでは、ギリシャ、イタリア、スペインがあるらしいが、通常は悪魔の魚として、嫌われる。
なお蛸は、平安時代の漢和辞書である「和名類聚抄」(19.魚貝部=魚類・海棲動物)に載っているが、和歌に最初に詠われた時期を、私は知らない。

    蛸壺やはかなき夢を夏の月       芭蕉


  ならべほせる烏賊の生干のするどき香ただよふ中の裸の子等よ
                       石榑千亦
  章魚の足を煮てひさぎをる店ありて玉の井町にこころは和ぎぬ
                       斎藤茂吉
  寂しさに海を覗けばあはれあはれ章魚逃げてゆく真昼の光
                       北原白秋
  わが菩提寺の和尚におくるマルセイユ埠頭魚市の巨いなる章魚
                       塚本邦雄 
  すさまじき蛸の交尾を水槽に見てゐたりけり燈を暗くして
                       中西輝麿
  水族館に入れば耳より溶けはじめきみが見えなくなる蛸の前
                       佐佐木幸綱