天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

青葉潮

江ノ島沖

 江の島の東側に位置する湘南港(通称:江ノ島ヨットハーバー)は、1964年、東京オリンピックのヨット競技場として整備された。オリンピックでは40カ国が参加、選手281人、艇数109艇がフィン級からドラゴン級までの5種目を競った。また、1998年に開催された「かながわ・ゆめ国体」のヨット競技を契機に、保管隻数が拡大して、ハーバーの機能が充実した。
 薫風の五月ともなれば、ここから多くのヨットが沖に出て、セーリングを楽しんでいる。ただ、大島や八丈島あたりまで行ってくるヨットは、少ないようである。クルーザーでないと無理なのだろう。


    さざ波の入江の風にカヌー漕ぐ
    出港のヨットの白帆風に鳴る
    釣上げし小魚をどる青葉潮
    釣人の足場あやふし青葉潮
    しら鳥がまぢかく飛ぶも青葉潮


  さざ波の湘南の海所在なしサーフボードに立ちて櫂漕ぐ
  岩牡蠣の小は六百円大は千五百円店先に見る
  白帆はる五月の風にさそはれて浜昼顔の群落に遭ふ
  名も知らぬ小さき花々踏み倒し草はら行くはかなしかりけり
  初心者のヨットは風に流されて身を反らせどもコース外るる
  次々にヨット出でくる江ノ島の入江は五月潮風の声
  エンジンを止めて帆を張るヨットあり風をはらみて滑り出だせり
  釣人がならぶ五月の突堤の空を地元の鳶が見廻る
  着水の場所さがすらしさざ波の海すれすれにしら鳥が飛ぶ
  潮風に帆柱が鳴るぶんぶんぶん蜂の纏はる浜茄子の花
  帆柱のヨットまぶしむ入江には風になびかふ浜茄子の花