天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

秋風の里山(1)

藤沢市新林公園にて

 藤沢市新林公園は、むかしの里山である。田畑は少なくなってしまったが、貯水池はまだ残っている。公園に隣接する小学校の生徒らが稲を育てている田んぼも数枚ある。今の時期、刈り取り前で、鳥除けの網が張られ案山子も立っている。


     古池や山田の奥の蝉しぐれ
     地に落ちし蝉にとりつく蟻のむれ     
     朝光(あさかげ)の谷戸の木陰の笹子かな


  生徒らの姿消えたる校庭に授業開始のチャイムひびかふ  
  みそはぎの淡きくれなゐ風に揺れ田の面にひびく牛蛙のこゑ
  夏去りて風立つ朝は無患子(むくろじ)の青き実がちる里山の道
  朝光のさし込む森の藪蔭はかぼそき声のちちろ虫鳴く
  ぬばたまの黒羽根ひとつ山道に落して鴉いづち行きけむ
  古民家の庭木の石榴口あけて赤黒き歯を見せて笑へる
  聞き分けの無き生徒らをならばするマイクの声の女先生