天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

大根

横浜市東俣野の田園にて

 古くはオオネ、スズシロと言った。なんともゆかしい名前。アブラナ科の一、二年生の野菜。中央アジアが原産という説あり。


     死にたれば人きて大根煮(た)きはじむ   下村槐太
     一夜寝て大根うまきおでんかな      長谷川櫂


  いにしへはおほねはじかみにらなすびひるほし瓜も歌にこそよめ
                         小沢盧庵
  夕されば大根の葉にふる時雨いたく寂しく降りにけるかも
                         斎藤茂吉
     宗次郎に
     おかねが泣きて口説き居り
     大根の花白きゆふぐれ          石川啄木


  人一人大根引けり秋の野の光にはゆる不二の白雪
                         四賀光子
  大根の一株ごとの葉のしげり斯かる無駄なき生あり此処に
                         鹿児島寿蔵
  大根が身を乗り出してうまさうな肩から胸までを土の上に晒す
                         奥村晃作