天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

鴫(しぎ)

横浜市舞岡公園にて

 シギ科の鳥の総称。仲間が90種もいる。一般にくちばしが長く、上下に曲る場合もある。日本では50種あまりが記録されている。日本で繁殖するものに、イソシギ、ヤマシギ、オオジシギ、アマミヤマシギ、アカアシシギの5種類があるという。『日本動物歌集』(花岡謙二編、寺本書房、昭和二十二年刊)の説明と歌を、以下に引用する。
鴫科。種類多き旅鳥。秋季水田中に多数棲息し、翼長くして尖り飛翔極めて迅速。最良の猟鳥に「たしぎ」あり。肉味頗る佳なり。

  黄昏の霧たちこむる秋の田のくらきが方へ鴫鳴きわたる
                    長塚 節
  積み藁の裾這ふ風のぬくとくて田に啼く鴫のこゑききにけり
                    飯田莫哀
  蒼然と暮色は迫る相模野や寒き田面を鴫鳴きわたる
                    花岡謙二

古典和歌からも引いておこう。西行が大磯で詠んだという歌は、あまりに有名だが。


  春まけて物悲しきにさ夜更けて羽振(ぶ)き鳴く鴫誰が田にか住む
                 万葉集大伴家持
  心なき身にもあはれは知られけり鴫立つ沢の秋の夕暮れ
                 新古今集西行

家持の方は「タシギ」、西行の方は「イソシギ」と思われる。