天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

新樹光

マルバウツギ(二宮町・吾妻山にて

 初夏の樹木の息吹を浴びたくて、吾妻山に行ってきた。いつものように、初めに梅沢海岸に寄って潮騒を聞き、釣人たちの様子を眺めた。吾妻山では、今の時期、目立つ花はない。上方にはコゴメウツギ(バラ科コゴメウツギ属)、マルバウツギ(ユキノシタ科ウツギ属)、ヤマボウシなどが白い花をひっそりとつけている。地上には、紫蘭が淡くうつむいている。


     望遠鏡(とほめがね)富士の雪崩をとらへたり 
    
  場所かへてまた釣りはじむ青旗の釣舟とまる二宮の沖
  鉄柵をつくれどむなし釣人が立入禁止の突堤に立つ
  釣人の足元にくる鳩のむれ釣果いかにと首を傾ぐる
  野良猫が蝶追ひかくる朝の日に地引網干す二宮の浜
  「ご自由に」と杖たてかくる参道の藪蔭あはき朝の木洩れ日
  脱皮せし若竹青き竹林に神いますがに光射し来る
  今ははや登ることなき大山の峰くろぐろと西に聳ゆる
  裾野より雪解けはじむ富士の峰七合目まで行きし日思ほゆ
  咲き満てるマルバウツギの花にきて朝の蜜吸ふ大瑠璃揚羽
  吾妻山頂き過ぎて木洩れ日の足裏やさしき大鋸屑(おがくづ)の道
  わが歳の素数なること寿ぎて次の素数へ生きむと思ふ


[参考]
コゴメウツギ: バラ科コゴメウツギ属。北海道の日高、本州、四国、
        九州に生育する。五月ころに本年枝に花をつける。
マルバウツギ: 一名ツクシウツギとも。ユキノシタ科ウツギ属。