天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

合歓(ねむ)の花

近所の路傍にて

 合歓は、ねぶ、ごうか、とも読む。マメ科の落葉高木。葉は刀身状。夜には眠るように閉じる。といっても私は未だ確認していない。六、七月に淡紅色の五弁花を開く。万葉集では、三首に出て来る。


     夕日さす舟に疊や合歓の花       長谷川櫂
     合歓の木の花の眠れる夜空かな     長谷川櫂
     花合歓の夢のごとくに水の玉      長谷川櫂


  昼は咲き夜は恋ひ寝る合歓木(ねむ)の花君のみ見めや
  戯奴(わけ)さへに見よ      万葉集・紀 女郎


  我妹子が形見のかふくわ花にのみ咲きてけだしも実に
  ならぬかも        古今和歌六帖・作者未詳


  山深みいつよりねぶと名をかへてかふくわの木には
  人まどふらむ              藤原光俊


  親しきはうすくれなゐの合歓の花むらがり匂ふ旅の
  やどりに                斎藤茂吉


  合歓の葉の 深きねむりは見えねども、うつそみ愛しき
   その香たち来も            釈 迢空


  合歓の花しだるる下に言葉絶えひぐらしは暗く声あはせたり
                      前登志夫