天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

青潮

二宮海岸にて

 梅雨のさなかには行けなかった二宮町の吾妻山に登ってきた。その前に例によって、二宮の梅沢海岸に坐って、ぼんやりと梅雨明けの障u潮の海を眺めた。ところで私は何故にこうも吾妻山やこの二宮海岸に拘るのか、読者は疑問に思われるかもしれない。以前にも紹介したのだが、この地は、日本武尊とその妻・弟橘媛命に関わる歌枕なのである。伝説によれば、三浦半島沖の走水に入水して、嵐から夫を救った弟橘媛命の櫛が、この海岸に流れ着き、それを吾妻山に祭ったという。それが吾妻神社であり、吾妻山という名称の由来もこの辺にある。まあ、こんな古めかしい話を現代に懐かしむ人は、ほとんどいないであろうが。なおこの山からは富士山が良く見えるので、木花開耶姫を祭る浅間神社もある。


     色ちがふ花ひと本のむくげかな
     涼しさや網つくろへる高架下
     青潮の果ては黒潮伊豆の海
     白雲の下に大島夏の海
     大鋸屑(おがくづ)の道にやすらふ木下闇


  白雲のかむさる島は大島ととりとめもなく浜に眺むる
  梅雨明けの空を映せる青潮のくだけて白きこゆるぎの浜
  二宮の沖にとどまる釣舟は船尾に青き旗かかげたり
  コスモスの早や咲き初めし山頂にわれは仰げる梅雨明けの空