天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

うな重

鎌倉・茅木屋にて

 重箱の上の箱に鰻の蒲焼を、下の箱に飯を詰めた料理。一つの箱でご飯の上に蒲焼をのせたものもいう。万葉集の家持の歌は、あまりに有名。以下では、うな重に限らず、鰻を食する歌をあげた。


  石麻呂にわれ物申す夏瘦に良しといふ物ぞ鰻取り食せ
                   大伴家持
  汗垂れてわれ鰻くふしかすがに吾より先に食ふ人のあり
                   斎藤茂吉
  ひと老いて何のいのりぞ鰻すらあぶら濃過ぐと言はむ
  とぞする             斎藤茂吉


  野田岩の二階座敷にうなぎ食ふ二十年ぶりうなぎ柔ら身
                   宮 英子
  ふたすぢの鰻を割きて食はむとすうとくなりゆく斎藤茂吉
                   岡井 隆
  うなぎは五、うち三びきは隣人に、村めいて来しひさしの
  かげり              岡井 隆


  蒲焼に酒をたらして食(くら)ふのを至上の善といひし人はも
                   岡井 隆
  鰻の肝・鳥のなま肝・肝食ひののちのさびし汗拭はばや
                   馬場あき子
  蠅取り紙吊さるる店に夕日さし鰻は桶のまるみにそえり
                   藤本則子
  鰻屋にうなぎの腹の裂かれゐる昼かがやきてクレマチス咲く
                   栗木京子


 以前は、うな重やうな丼は家庭で作っても旨くないということで、もっぱら専門店に行って食していた。特に鎌倉では、4店に通ったものである。ところが最近、中国産の加工済みの冷凍うなぎを買ってきて、レンジで加熱してタレをつけ、熱いご飯にのせて、山椒をかけて食べれば、十分旨いということがわかった。外食するよりは、はるかに安上がり。