天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

初秋の真鶴岬

ケープ真鶴の晶子歌碑

 真鶴岬は、神奈川県南西部の相模湾に突出する岬である。箱根火山の溶岩流で形成された。岬のかたちが鶴の羽を広げたように見えるところから真鶴岬の名がつけられたという。今までに何度も訪ねて歩き廻ったが、その間に随分変化した。特に店舗の消長が著しい。店は激減したと言っていい。真鶴岬を詠んだ句や歌がどれほどあるか不明だが、次の三作品は知られたものであろう。坪内逍遥の句は何時作られたものか。注連縄が張られていなかった時代らしい。短歌の方はいずれも碑になっている。


     初日の出 なぜ三つ石に 注連(しめ)張らぬ
                     坪内逍遥

  真鶴の林しずかに 海の色のさやけき見つつ わが心清し
                    佐々木信綱
  わが立てる 真鶴崎が二つにす 相模の海と伊豆の白波
                     与謝晶子


真鶴岬の森は原生林ということなので、引き続き保安管理を徹底して自然を守ってほしい。


     青潮の白き飛沫や野菅草
     舟虫や番場浦の遊歩道
     英靈の御霊しづめむ百合の花


  青潮の沖に初島かすみたり晶子の歌碑のケープ真鶴
  傲然と青潮くだけちる浜に舟虫を追ふわれならなくに
  大いなる松に番号札のあり鱗のごときその松の肌
  楠松の立ちて小暗き原生林まなづる岬に魚の棲みつく
  石階の下に祀れる英靈に蝋燭の火と山百合の花
  今朝揚げし魚網にのこる鱚一尾腹うす白く岸壁に干る
  青潮真鶴岬わがくれば松の木蔭に信綱の歌碑
  引潮に黒く濡れたり注連縄張れる三つ石までの石くれの道
  太陽は頭上にあれど潮の香のまなづる岬秋風の吹く
  切り出せる岩海岸につみ重ね高潮ふせぐ真鶴岬
  蓄財のすべて凍結されたればいづこに遁るカダフィ大佐