天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

木の子

二宮町吾妻山にて

 漢字で茸や菌を当てる。木耳(きくらげ)とも言う。古くは、「たけ」、「くさびら」と呼ばれた。大形菌類の俗称である。「きのこ」は江戸初期に秋の季語になった。なお、万葉集では、松茸が「秋の香」として詠まれている。


     爛々と昼の星見え菌生え      高浜虚子
     膝まづくときの土の香きのこの香  青柳照葉
     月夜茸山の寝息の思はるる     飯田龍太


  高松のこの峯も狭(せ)に笠立ててみち盛りたる秋の香のよさ
                   万葉集・作者未詳
  伐りし木の朽ちて木の子の生ふるまで此の山下に住みとどまりし
                      土屋文明
  木耳(きくらげ)を剥ぎゆく魔物見し日より日毎に烈し林の落ち葉
                      大西民子
  いかほどの時間がたちて地中よりにじみ出でたり紅の茸は
                      大西民子
  みだらなるまつりのごとき毒茸の千の犇めきつゆのまに消ゆ
                      福田栄一
  食べられぬきのこは樹下に累々とおもねるごとく色香を放つ
                      藤原増寿美
  木耳(きくらげ)を摘む木のむかう薄暗く耳切りしゴッホ
  切られし芳一               植松法子