天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

ねこじゃらし

横浜市東俣野の田園にて

 「えのころぐさ」のことである。漢字で、狗児草、狗尾草と書く。狗児(えのころ)とは、犬の子のこと。それが何故猫と関係するかと言えば、子犬の尾に似た花穂に猫がじゃれつくからである。イネ科の一年草。秋の季語。


     いつせいに吹かれて海へねこぢやらし  石 寒太
     狗尾草貧中子守歌やさし        清水基吉
     汽笛とおし伸べし脚間の猫じやらし   古沢太穂


  涙こらへてこのしづかさもまもるなるゑのころ草の
  をさな穂の風             福田栄一


  猫じやらしの淡き黄の穂の相寄りてひかりのなかに
  ひかりのなかに皆顫(ふる)ひつつ    宮 柊二


  来む世にはゑのころぐさとわがならむ抜かれぬやうに
  踏まれぬやうに            大西民子


  えのころ草毛虫けむしと追い来しよ墓誌に一行ビルマ
  に死すと               飯田ふみ


  おのがじし狗尾草はその高き穂をあきかぜの手に
  ゆだねけり              阿木津英