天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

初冬の里山

藤沢市新林公園にて

 冬枯れの里山を歩いていると緑あふれる時期には気づかなかった草木に惹かれることがしばしばある。
 ニガキはニガキ科ニガキ属の落葉高木。雌雄異株。東アジアの温帯から熱帯に分布する。全ての部分に強い苦味がある木で、そこが名前の由来。材から樹皮を剥ぎ取り、乾燥させると生薬の苦木になる。ニガキの心材は黄色がかっており、木目がはっきりしているため、細工小物などに使用される。
 落羽松(らくうしょう)はスギ科ヌマスギ属の落葉針葉樹。別名は沼杉。北アメリカ原産の高木。日本にも移植され公園などで見られる。湿潤地に適し、沼沢地での根元が冠水した状態で自生することが多い。そのため日本ではヌマスギと呼ばれる。心材は精油を含みながらも細胞構造であるため、軽量で土中や水中で腐朽しにくい特質を生かし、枕木、船舶材、屋根板などに利用される。
 蒲(がま)は、ガマ科ガマ属の多年草。池や沼などの水辺に生える。夏に茎を伸ばし、円柱形の穂をつける。赤褐色で太い下部は雌花の集まりで、結実後は綿クズのような冠毛を持つ微小な果実になる。花粉は蒲黄(ほおう)と呼ばれる生薬になり、利尿、通経に効用があるという。

     椎茸のほだ木ころがる笹子かな
     秋ふかみ栗鼠啼く声の際立てる
     冬枯の森に苦木の若葉かな
     木瓜の花ジャングルジムに子らあそぶ
     池の辺にのこる蒲の穂二、三本
     かまつかの実はあかあかと鳥を待つ
     霜月の朝日まぶしむ野川かな


  池の辺に四、五本のこる蒲の穂に小春日和の朝日差したり
  外見には杉とみまがふ落羽松冬に入りては紅葉したり
  池の辺の落羽松の木冬に入り赤褐色の針葉(はりば)落せり
  大いなる花を好むかこの家はダチュラの横の皇帝ダリア
  落葉せしかまつかの実はあかあかと心待ちにす鳥の到来
  笹鳴の主の居場所をつきとめむわが佇める藪蔭の道
  霜月の野辺路に立つは何の木か包皮のむけて朱実あらはる
  アオサギは首Sの字にはばたきて飛び越えゆけり枯葦の原
  里山の小春日和は丘の上のベンチに坐り文庫本読む
  町川の浅瀬に佇ちて水面見る姿すがしき朝の白鷺
  里山の刈田の畦をわがゆけば小川の面の朝日まぶしき
  近づけど身じろぎもせぬ山鳩は病むかと見たり落葉の中に