天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

花八手

横浜市東俣野の公園にて

 「ヤツデ」はウコギ科の常緑低木。大きくて厚い葉は掌状に裂ける。晩秋に黄白色の小さな五弁花をつける。翌年の4月5月頃に黒い球形の果実が熟する。庭木としても栽培される。「八手の花」は冬の季語、傍題が「花八手」。


     遺書未だ寸伸ばしきて花八つ手   石田波郷
     花八ツ手忍者寺へと路地抜ける  佐藤寿々子
     石垣の琉球ぶりや花八つ手     林田千代


  窓の外(と)に白き八つ手の花咲きてこころ寂しき冬は
  来にけり                島木赤彦


  花茎のあらはに太くわかれ咲く八ツ手の花は群れつつ
  小さし                三ヶ島葭子


  接吻(くちづけ)をかなしく了へしものづかれ八つ手団花
  (たまばな)に息吐きにけり        宮 柊二


  月出でていよいよ暗きわが庭に八つ手の花の光りはじめぬ
                      大西民子
  すぎし日はさみしかれども花八つ手み冬に近く色たちにけり
                      村野次郎