天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

石蕗の花

横浜三渓園にて

 石蕗は「つわ」「つわぶき」あるいは文字通り「いしぶき」とも言う。キク科の常緑多年草。暖地の海辺に野生するが、東北地方の中部から北には見られない。
以下の山口誓子の作品は、彼の石蕗の花の全5句である。


     つはぶきの終日陰を出でずして     山口誓子
     虹よんで倦むこと知らず石蕗の花
     信心の山路膝行石蕗の花
     石蕗黄なり燈台の子の椅子机
     石蕗の黄の専横薩摩では許す
     借家見の雨戸を繰れば石蕗の花     巌谷小波
     石蕗の花禅の時間の流れをる      堀内 薫
     夕闇に石蕗の明りのまだ昏れず     星野 椿


  わが時間にかかはりのなき石蕗の花ここ水上にかがやけるかな
                        伊藤一彦