天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

寒椿

下曽我にて

 ツバキ科の常緑低木。十一月から二月まで八重咲き紅色の花をつける。冬の季語。


     天険に一輪赤き寒椿     吉澤卯一
     古への道のこと問ふ寒椿   道山昭爾


  寒つばき深紅に咲ける小さき花冬木の庭の瞳のごとき
                   窪田空穂
  寒椿を生垣とする路地の家いつしか異る表札の文字
                   吉田正俊
  幼木にひとときに咲く寒椿わかき命のあふるるごとし
                   窪田章一郎
  おほかたの雪消えしころ寒椿さく道のべは雪凍りをり
                   佐藤佐太郎
  寒椿咲きそめにけり幽かなるねがひごともちて生き
  つがんとす             加藤克己


  くれなゐを冬の力として堪へし寒椿みな花をはりたり
                   馬場あき子
  寒椿花落しつつ咲きており母ひとり住むふるさとの家
                   多賀陽美