天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

桃の節句

藤沢市新林公園にて

 平安時代、日本には五つの節句(人日・上巳・端午・七夕・重陽)があった。当時貴族にとっては、それぞれが季節の節目の身のけがれを祓う大切な行事だった。その中の一つ「上巳(じょうし)の節句(三月三日)」には、貴族階級の子女が、天皇の御所を模した御殿や飾り付けで遊んで健康と厄除を願った。これが室町時代に「桃の節句」となる。弥生の節句、雛祭り、雛遊びなどとも。


  たらちねのうなゐ遊びの古雛の紅あせて人老いにけり
                     正岡子規
  蜜柑箱ふたつ重ねてめりんすの赤き切しく我が子等の雛
                    与謝野 寛
  薄墨のひひなの眉に息づきのやうな愁ひと春と漂ふ
                     稲葉京子
  われにふかき睡魔は来たるひとりづつ雛人形(ひな)を
  醒まして飾り終ふれば        小島ゆかり


 桃の節句になると、公園にある古民家の座敷には雛壇が飾られる。今年は藤沢の新林公園の古民家で見た。


     古民家や女雛の口のなまめかし
     大和はや梅桃桜花の宴
     目がしらが痒くてならぬ杉花粉


  古民家の縁側に身をさし入れて光一閃雛壇を撮る
  閃光にうかぶ雛のくちびるの紅なまめかし古民家の部屋
  古民家の座敷における雛壇の三人官女のくちびるを恋ふ
  紅梅の下に座りて白梅の古木を描く女ふたりは
  自転車に乗りて木の下めぐり来し子の頬紅しわれに微笑む
  しきしまの大和心はうかれ出づ梅桃桜の花の宴に