鴬
ヒタキ科の漂鳥で全国に分布する。雄の方が一回り大きいが、体色では区別はつかない。春告鳥の名もある。冬期の鋭く短い鳴き声を「ささ鳴き」、春になってケッキョケッキョという鳴き声を「谷渡り」という。夏も終りの頃には「老鶯(おいうぐいす、ろうおう)」と呼ばれる。
鶯や下駄の歯につく小田の土 凡兆
うぐひすや柱に掛けし蓑と笠 武藤紀子
我がやどの梅の下枝に遊びつつうぐひす鳴くも散らまく惜しみ
万葉集・高氏海人
をさなげに声あどけなき鴬をうらなつかしみおり立ちて聞く
伊藤左千夫
またしても啼きそこねたる鴬を笑はむとして涙こぼれき
太田水穂
こゑ細るすなはち肉のほそるべき母見えねども夏うぐひすよ
塚本邦雄
息ながく夏鴬は啼きゐたり朝の樹海のかぜの裂けめに
玉井慶子
待つとしもなき鴬の初音にて冴えわたる梢を妻と仰ぎぬ
大滝貞一