藤の花
藤はマメ科の蔓性落葉樹。日本産のフジ属にはノダフジとヤマフジの2種がある。ノダフジは本州から九州の低山地や平地に生え、茎は長くのびて他の物にからみつく。ヤマフジは近畿から九州の山野に生える。花序はやや短く、紫色の蝶形花は大きい。茎は巻き方が逆で、小葉は4,6対、やや厚く裏面には毛が多い。
藤の花雲の梯(かけはし)かかるなり 蕪村
白藤や揺りやみしかばうすみどり 芝不器男
藤棚を透かす微光の奥も藤 長谷川かな女
春雷のあと昆虫もいづこにかひそみて石に藤の花冴ゆ
大野誠夫
生ける世のさびしくならば此所に来よ谷にたなびく藤浪の花
土屋文明
藤棚は箱舟にして花嫁がひと夜を越ゆるむらさきの波
谷井美恵子
蜂などのゐる寂けさやまのあたり藤は垂直にひかりを吊す
上田三四二
藤の花うすむらさきの宙に垂れ地にはとどかぬ未完なる滝
岩井謙一
熊蜂のわがもの貌や藤の花
蜂つどひ狂喜乱舞す藤の花