菖蒲―俳句編―
花菖蒲は仲夏の季語。傍題に白菖蒲、菖蒲園、菖蒲田がある。
はなびらの垂れて静かや花菖蒲 高浜虚子
花菖蒲ただしく水にうつりけり 久保田万太郎
文を解くごとしや朝の白菖蒲 角川照子
きれぎれの風の吹くなり菖蒲園 波多野爽波
参考までに燕子花(かきつばた)(杜若とも書く)と渓蓀(あやめ)の句を二句ずつ以下にあげる。
人々の扇あたらし杜若 蓼太
天上も淋しからんに燕子花 鈴木六林男
あやめ咲く野のかたむきの八ヶ岳 木村蕪城
風筋に立つ野あやめの二三本 星野麦丘人
[注意]短歌編で述べたと同様のややこしい事態が俳句の季語にもある。季語「花菖蒲」と季語「菖蒲」とは、何の関係も無いのである。前者はアヤメ科で後者はサトイモ科の植物。別種なのである。前者は花を楽しみ、後者の花は地味で観賞の対象にならない。「菖蒲」は邪気を払うという香気ある葉が重要で、菖蒲湯や軒菖蒲に用いられる。紛らわしさは、それぞれの傍題にも現れる。
「花菖蒲」の傍題: 白菖蒲、菖蒲園、菖蒲田
「菖蒲」の傍題: 白菖(しょうぶ)、菖蒲草(あやめぐさ)、あやめ、
あやめ草