天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

湘南の西行歌碑(3)

辻堂熊の森にて

 三番目は辻堂の熊の森にある歌碑について。学生寮というマンションの裏庭にあり、まことに見つけにくい。このあたりは昔、畠山重忠の友人の熊谷次郎直実の領地で一面の森林であつたため、熊谷家の一字をとって熊の森とよばれるようになったらしい。畠山重忠が奉納したという石祠がある。熊の森の名称から、熊野権現を奉ったと思われる。変体仮名を使って歌が彫られているが、読みやすく直すと次ぎのようになる。


  柴松のくずのしけみに妻こめて とかみが原に牡鹿鳴くなり


下の句に出てくる「とかみが原」は「砥上ヶ原」のことで、辻堂から鵠沼一帯がそう呼ばれていたという。先の茅ヶ崎文化資料館門柱の歌とよく似ている。これらの歌は、「西行法師全歌集」「存疑・誤傳西行法師和歌」には出ていない。いったいどこから持ってきたものか。


     木槿咲く犬猫医院休診日
     犬が嗅ぐ垣根のもとのカンナかな


  みちのくの旅の途中に寄りしとふ熊の森権現
   西行の歌碑


  熊の森権現ありし跡として小さき祠と西行の歌碑
  西行が腰かけしとふ根上りの大松は無く梔子の花
  西行の歌と伝へて碑が立てり梔子にほふ庭の片隅
  西行の歌か否かはわからねど歌碑ふたつあり茅ヶ
  崎、辻堂


  内容の微妙に似たる歌二首がそれぞれ歌碑となりて
  残れり


  アメリカ産チェリー「レイニア」を購ひぬ西行歌碑
  を見つけし後に