天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

土用の丑の日

わが食卓のうな丼

 土用は四季の最後の約十八日間をさす。陰陽五行説で、各季の終りを「土」が支配すると考えた。「丑の日」は十二支の丑にあたる日。現在では、もっぱら夏季の「土用の丑の日」が有名。夏負けしないように鰻を食べることは、大伴家持が詠んだように古代から行われていた。


     土用鰻息子を呼んで食はせけり  草間時彦
     丑の日のけむり窓より昇天す   五所平之助


  ヒトは老いをとんと忘れて死はさらに忘れ土用のうなぎ屋繁盛
                   山埜井喜美枝
  土用鰻食ひをり開襟シャツを着て道頓堀に貧(ひん)の顔を見す
                    前川佐美雄
  鰻裂く。鋭刃の走りに身をよぢてなまめくものを 一息に裂く
                     岡野弘彦
  鰻重の位置おごそかにそののちの箸のうごきのみだりがはしき
                    前川佐重郎
  ほしいままにはびこりし原っぱの雑草に今日も土用のびしょ
  びしょの雨              渡辺順三


 ちなみに斎藤茂吉はうなぎ好きなことでも知られた。「短歌人」8月号に載った私の歌を次にあげておく。「斎藤茂吉展」と題する一連から。


  一年に六十八回うなぎ食ふ昭和三年の斎藤茂吉