天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

残暑雑詠(1)

二宮海岸にて

 昼間のうだるような暑さと後を絶たない日射病に変りはないが、空の雲山野の草木のたたずまいや吹き渡る風に秋の気配が濃くなってきた。


     青田道をさなの後に従へり
     枝豆をとばして口に秋来る
     舘山寺花火見上ぐる観覧車  
     早稲の田を黒きボロきれとりかこみ
     目路果つるまで向日葵の川の土手
     ミンミンや欅の肌にまぎれたる
     蝉しぐれ義経松は碑のみなる
     桜木を好みてあまた油蝉
     義経首塚さがす炎天下
     ひつじ草咲くは雨水排水池
     草叢に白百合姉妹咲きにけり
     一様に昼顔笑まふ野道かな
     青空が一番似合ふ百日紅
     蓮の花源平池を棲み分けて
     一面は白蓮ばかり源氏池
     水兵の白き夏服八幡宮
     軒下に腹開き干す新秋刀魚
     秋立ちぬ山の稜線くきやかに
     うち寄する波の音にも秋のこゑ
     吾妻山草木ゆるがす蝉しぐれ
     狛犬や吾妻宮の蝉しぐれ
     コスモスと背丈を競ふ箱根山
     丹沢の奥に立ちたり雲の峰
     吾妻山つくつくほうしつくしーおす
     吾妻山下草刈れるボランティア
     顔面を汗なだれ落つ吾妻山
     蝉ばかり撮りて下山す吾妻山
     走り去る電車の風に秋を知る


  洪水に幾たび遭ひし酒匂川考案されし石組を見る
  油蝉黙してとまる同じ木にとぎれとぎれにミンミン
  が鳴く


  八幡宮葉月の朝の階段を下りくる白き海自隊員
  二宮の浜に坐りて沖見れば秋さはやかに潮風の吹く
  七年を地中に暮し這ひ出でて十日の命ミンミン蝉は
  登りきて吾妻宮に佇めばみんみんしゃあしゃあつく
  つくほうし