天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

雲(3)

横浜市東俣野から見上げた雲

 ここでは現代短歌に詠まれた雲の例をあげる。


  山の彼方に雲ゆく見れば訪ひがたきわがみどり児の
  墓辺思ほゆ            大西民子


  うつうつと地平をうつる雲ありてその紅はいずくへ搬ぶ
                   岡井 隆
  ただよへる雲の境がけぢめなくにごりて暑き午後となりたり
                   佐藤佐太郎
  黄の雲の沈めば風のはひりきて潔らかになりし編集室か
                   篠 弘
  雲踏みてわれは行きたしはつなつの空の奥なる青の画廊へ
                   小島ゆかり
  後部座席のガラスに雲を満載しライトバン一台悠然とゆく
                   渡辺礼子
  掴み得るほどに雲あり窓のそと湿りてけふの咽喉は安けし
                   春日井建