天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

雲のつく歌語

横浜市東俣野から見上げた雲

 和歌では、雲のつく歌語がいくつもある。「雲居」「雲隠り」「雲立ち渡る」「雲のたえ間」「雲のはたて」「雲間」「雲の峰」など。


  青駒の足掻(あがき)を早み雲居にそ妹があたりを過ぎて
  来にける            万葉集・柿本人麿


  わたの原こぎ出でてみれば久方の雲居にまがふ沖つしら波
                  詞華集・藤原忠通
  君すめばここも雲井の月なれどなほこひしきは都なりけり
                  平家物語平行盛
  思ひきや深山の奥にすまひして雲居の月をよそに見むとは
                  平家物語建礼門院
  ももづたふ磐余(いはれ)の池に鳴く鴨を今日のみ見てや
  雲隠りなむ            万葉集大津皇子


  狭井川よ雲立ち渡り畝傍山木の葉さやぎぬ風吹かむとす
               古事記・伊須気余理比売
  秋風にたなびく雲のたえ間よりもれ出づる月の影のさやけさ
                  新古今集藤原顕輔
  ながめ侘びそれとはなしにものぞおもふ雲のはたての夕暮の空
                  新古今集・源 通光
  天の戸をおしあけがたの雲間より神代の月のかげぞのこれる
                  新古今集・藤原良経
  真夏日の雲のみね天(あめ)のひと方に夕退(ゆふそ)きにつつ
  かがやきにけり              斎藤茂吉