天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

トマト

横浜市東俣野の田園にて

 ナス科の野菜。温帯では一年草だが熱帯では多年草。南米原産、メキシコで栽培トマトに分化した。ヨーロッパへは16世紀に導入されたが、観賞用であった。食用にされたのは18世紀以後という。わが国には18世紀初めに渡来、昭和になって食用として普及した。これは思いがけない事実である。2011年8月1日のブログで取り上げた作品以外のものを以下にあげる。


     トマト洗ふ蛇口全開したりけり   本井 英
     昭和遠し冷しトマトといふ肴   伊藤伊那男


  肌色の温室トマト剝きて待つ鎮咳剤の効かむ頃ほひ
                     滝沢 亘
  ああいまだ借りがどっさりせめてもの湯剥きトマトを昼餉の母に
                     道浦母都子
  片手でトマトがまだつぶせるぞボンゴレ熱くつくらん
                     高瀬一誌
  ぷりぷりと赤きトマトを湯剥きせりおまへの心も裸にしたく
                     矢部雅之
  露地物のトマトの強き香の季節がぶり亡き人嚙みあてにけり
                     田村広志
  暖かきトマト捥ぎをれば西空より積乱雲は静かに移動す
                     内野潤子