天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

薔薇

鎌倉文学館にて

 バラは古来、愛と美の象徴とされた。その香は香水として珍重されてきた。盛んに交配や改良が行われ、園芸品種は千種を超える。薔薇の栽培は古代オリエントに始まる。ギリシャ、ローマを経てヨーロッパに伝わった。大きくは、株バラと蔓バラの二種類がある。夏の季語であるが、秋にも見ごろになる種類がある。わが馴染みの場所としては、横浜・港の見える丘公園鎌倉文学館の庭、大船フラワーセンターなどがある。


     トランプを投げしごと壺の薔薇くづれ  渡辺水巴
     薔薇よりも濡れつつ薔薇を剪りにけり  原田青児


  庭前の緋ばらの花もひる一とき色消して黒し海の銀の中に
                     四賀光子
  はるかなる雲呼ぶべしや薔薇園に花もおのれも崩(くえ)
  やすき日は             久方寿満子


  寒薔薇の堅き蕾のほぐれゐて葩(はな)の罅隙(すきま)に
  しんとある夜             前川 緑


  消えがての夕光(ゆふかげ)沈む時の間をわがあこがれは
  水のなかの薔薇            前川 緑


  沈黙のわれのごとくに茎たかく咲くくれなゐの冬薔薇あはれ
                     佐藤佐太郎
  四百円にて吾のものとなりたるを知らん顔して咲くバラの花
                     俵 万智
  薔薇の名のトスカニーニよわれかつて美しき脚にひれ伏したりき
                     山田富士郎
  芽ぶきたる蔓薔薇の尖(さき)指に撫でけふ書き出しの言葉
  をさぐる                 篠 弘