天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

コノハズク

伊勢原市大山にて

 フクロウ科の鳥でユーラシア大陸、アフリカに分布し、日本へは夏鳥として九州以北に渡ってくる。針葉樹林に棲んで、夜間に昆虫を捕食する。鳴き声が「仏法僧」と聞こえるところから鳥のブッポウソウと間違えられた。1935年になって、この事実が判ったという。


  木の葉梟(づく)一羽ゐて啼く深谷の闇に入りゆく人に
  逢はむため               岡野弘彦


  ぶつぽふそうのそうおぼろなり人工の星はくるみの葉叢
  におちて               山田富士郎


  夜の闇濃くなるときをまぼろしの木の葉づく啼くうつつの声に
                      泉 弘子
  夜の山に啼く青葉づく木の葉づく恋ひわたるかな梅雨降りいでて
                      三國玲子
  夏山は昏るるに遅きかはたれの霧ごめに鳴く木の葉づくのこゑ
                      中村正爾


 ちなみにブッポウソウについて。これも夏鳥として日本に渡ってくる。アジアの東南部に分布する。カケスよりもやや大きく、嘴と脚が赤い。体は青緑色。寺社の杉の大木に巣を作ることが多い。「ギッギッ」「ゲゲゲッ」と悪声に啼く。


     仏法僧精進の酒過ぎにけり     矢島渚男
     仏法僧廊下の濡れている理由   夏井いつき


  松の尾の峯静かなる曙にあふぎて聞けば仏法僧鳴く
             新撰和歌六帖・藤原光俊
  仏法僧鳥(ぶつぽうそう)啼く時おそし谷川の音の響かふ
  山の夜空に             島木赤彦


  夜ふけし山かげにして啼くらしき仏法僧鳥(ぶつぽうそう)
  のこゑのかそけき          斎藤茂吉


  仏法僧鳥絶えしも時の移りなれ何を願ひてつどふ我等か
                   小市巳世司