天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

湯河原・万葉公園(3)

万葉公園にて

 終りに、「文学の小径」の板碑に紹介されている短歌の例をあげる。


  湯ケ原をおしつぶさんとするばかり山の迫れる南の相模
                      平野万里
  木がくりに滝の音とよむ万葉人来遊ぶらむと思ひつつ歩む
                      佐々木信綱
  たそがれに咲ける蜜柑の花一つ老いの眼にも見ゆ星の如くに
                      谷崎潤一郎
  湯河原の春吟堂に客絶えず桜咲く日もみかん実る日も
                      谷崎潤一郎
  箱根よりいかづち雨の移り来て春しづもれる峡をとよもす
                      吉野秀雄
  光りつつ沖を行くなりいかばかりたのしき夢を載する白帆ぞ
                      与謝野 寛
  吉浜の真珠の荘の山ざくら島にかさなり海に乗るかな
                      与謝野晶子
  ただひとり湯河原に来て既に亡き独歩を思ふ秋の夕暮れ
                      吉井 勇