
終りに、「文学の小径」の板碑に紹介されている短歌の例をあげる。
湯ケ原をおしつぶさんとするばかり山の迫れる南の相模
平野万里
木がくりに滝の音とよむ万葉人来遊ぶらむと思ひつつ歩む
佐々木信綱
たそがれに咲ける蜜柑の花一つ老いの眼にも見ゆ星の如くに
谷崎潤一郎
湯河原の春吟堂に客絶えず桜咲く日もみかん実る日も
谷崎潤一郎
箱根よりいかづち雨の移り来て春しづもれる峡をとよもす
吉野秀雄
光りつつ沖を行くなりいかばかりたのしき夢を載する白帆ぞ
与謝野 寛
吉浜の真珠の荘の山ざくら島にかさなり海に乗るかな
与謝野晶子
ただひとり湯河原に来て既に亡き独歩を思ふ秋の夕暮れ
吉井 勇