天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

椨(たぶ)の木

江ノ島にて

 タブノキクスノキ科の常緑高木。別名にイヌグス(犬楠)。東北地方から沖縄まで広く自生し、特に海岸沿いに多い。家具や器具、楽器、彫刻材、建材などに幅広く用いられ、樹皮は染料にもなる。
 タブノキの古名は都萬麻(つまま)とされ、次の歌がある。


  磯の上の つままを見れば 根を延へて 年深からし 
  神さびにけり         万葉集大伴家持


 現代短歌から。


  椨いくつ太ぶととしてここにあり生家の跡のしづか
  なりけり               岡部文夫


  たぶの樹の茂る塀沿いに雪深く残る鎌倉をひと日歩みぬ
                     金井秋彦
  春落葉しじなりしのち改まる青葉に花序の匂ふ犬楠
                     北沢郁子
  犬楠の花に眼をよせみつめたり早くも黒き実の入りてゐる
                     北沢郁子
  街の音絶ゆることなし蝉鳴きてたぶの木むらはここに
  古りたつ               石川恭子


  百年の瘤去年の瘤たぶの木はひとかたまりの一樹となりぬ
                     三枝昂之