石の歌(3)
碁石には、周知のように黒石と白石があるが、白石はハマグリなどの貝殻から作られるので、厳密には石ではない。黒石は、那智黒という硬質な粘板岩から加工される。海岸では、打ち寄せる波によって長年月もまれて、丸くなった石を見かける。右の画像の石は、羽衣伝説で知られる静岡県三保の松原(羽衣の松の根方)から拾ってきたもの。
うつらうつら庭をながめてあるほどに石われとなる吾
石となる 吉井 勇
証されているごとき後退ポケットについに投げざりし
石くれふたつ 岸上大作
心なく投ぜし刹那きらめきて永劫湖底の石と沈めり
沼波万里子
瞬時石割れ 内面匂う鮮しく 歪形なして褐色の紋
加藤克己
ゆく河の流れを何にたとえてもたとえきれない水底の石
俵 万智
千古 人 手ふれざりつる頂の石の破片を思ふにうつくし
佐佐木信綱