天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

雪の歌(1)

近所の風景

 東京や横浜に今年初めて積雪があった。朝早いうちは雨だったのに、昼前になって雪に変って積り出した。あまりに早く積もったのでびっくり。
 古来、雪の歌は数限りない。先ずは、古典和歌から。


  こと降らば袖さへ濡れてとほるべく降りなむ雪の空に消(け)
  につつ              万葉集・作者未詳


  立山に降り置ける雪を常夏に見れども飽かず神からならし
                   万葉集大伴家持
  石竹花(なでしこ)は秋咲くものを君が家の雪の巖に咲けり
  けるかも             万葉集久米広縄


  浦ちかく降りくる雪はしら波のすゑの松山こすかとぞ見る
                   古今集藤原興風
  忘れては夢かとぞ思ふおもひきや雪ふみわけて君を見むとは
                   古今集在原業平
  みやこまで音にふりくる白山はゆきつきがたきところなり
  けり              後撰集・読人しらず


  春日野は雪のみつむと見しかども生ひ出づるものは若菜なり
  けり              後拾遺集和泉式部


  春日野の雪をわか菜につみそへて今日さへ袖のしをれぬるかな
                   千載集・源俊頼
  駒のあとはかつ降る雪にうづもれておくるる人や路まどふらむ
                    千載集・西住