近代に詠まれた雪の歌をもう少し。
奈良井川(ならゐかは)みなかみ遠き山山にふりける雪は
雲の間にみゆ 太田水穂
路夾(はさ)む並木銀杏の若き枝懇ろに持つ降り積む雪を
窪田空穂
けふ一日(ひとひ)雪のはれたるしづかさに小さくなりて
日が山に入る 斎藤茂吉
栂(つが)の葉にこほりて硬(かた)き朝あけの雪をしみじみ
わが食(は)みにけり 前田夕暮
いつか見むいつか来むとてこがれ来しその蒼森は雪に
埋れ居つ 若山牧水
いささかの銭借りてゆきしわが友の後姿の肩の雪かな
石川啄木
南天のしげみに降りてつもらねばくれなゐの実は雪に
ぬれをり 尾山篤二郎