天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

雪の歌(3)

円覚寺・帰源院

 近代に詠まれた雪の歌をもう少し。


  奈良井川(ならゐかは)みなかみ遠き山山にふりける雪は
  雲の間にみゆ            太田水穂


  路夾(はさ)む並木銀杏の若き枝懇ろに持つ降り積む雪を
                    窪田空穂
  けふ一日(ひとひ)雪のはれたるしづかさに小さくなりて
  日が山に入る            斎藤茂吉


  栂(つが)の葉にこほりて硬(かた)き朝あけの雪をしみじみ
  わが食(は)みにけり         前田夕暮


  いつか見むいつか来むとてこがれ来しその蒼森は雪に
  埋れ居つ              若山牧水


  いささかの銭借りてゆきしわが友の後姿の肩の雪かな
                    石川啄木


  南天のしげみに降りてつもらねばくれなゐの実は雪に
  ぬれをり             尾山篤二郎