天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

雪の歌(4)

北鎌倉円覚寺にて

 現代の俳句(飯田龍太の作品)や短歌から。


     抱へたる蕎麦にも雪のみだれつつ  飯田龍太
     新雪にわが子のねむりさるをがせ
     遺されて母が雪踏む雪あかり
     灼熱の炉の奥やさし雪の夜は


  雪はまひるの眉かざらむにひとが傘さすならわれも傘を
  ささうよ              塚本邦雄


  雪ふかき峡の檜原に入りきたり雪に裂かるる木の声を聴く
                    岡野弘彦
  楕円しずかに崩れつつあり焦点のひとつが雪のなかに没して
                    岡井 隆
  降りながらみづから亡ぶ雪のなか祖父(おほちち)の瞠(み)
  し神をわが見ず           寺山修司


  泣くおまえ抱けば髪に降る雪のこんこんとわが腕(かいな)
  に眠れ              佐佐木幸綱


  雪こぼすくもりの下に出でて来て二点のまなこ子はまたたけり
                    高野公彦