うどん
私の個人的な経験でうどんが最も旨いと感じたのは、西宮に住んでいた頃、出張で京都や東京へ行く際に、阪急電車の十三駅や新大阪駅で食べた昆布うどんであった。見かけは、素うどんにおぼろ昆布をかけたものに過ぎなかったが、食べる度に旨いと感じた。なお、家で作る饂飩は、もっぱらキムチ饂飩である。饂飩、豚肉、白菜、椎茸、エノキダケ、葱、キムチ汁 などを一緒くたに煮る。喉ごしの良い麺を選ぶことが肝要。
夕餉にはうどん煮るとてその事を朝より待てりわれも
子どもも 吉野秀雄
風邪ひけば母がかならずとりくれし鍋焼うどん今日の昼餉に
滝沢博夫
うどん屋の饂飩の文字が混沌の文字になるまでを酔う
高瀬一誌
こころよりうどんを食へばあぶらげの甘く煮たるは慈悲
のごとしも 小池 光
すきとほる汁のそこひにしろじろと夢のまたゆめ大阪うどん
小池 光
すうどんのねぎの青さは空のやう すうどんと空 兵と空腹
池田はるみ
麦縄(むぎなは)といふ古き名を思ひつつ初秋の熱きうどんを
食へり 高野公彦
うどんを詠んだ歌は、ラーメンの歌よりはるかに多い。