天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

桜の季節(2)

鎌倉山にて

 鎌倉若宮大路の段葛、長谷寺鎌倉山と桜の名所を巡ってみた。花曇が続いていて気分は冴えないが、毎年似たような天気なのでしかたない。段葛の桜は期待どおりであった。鎌倉山では、さくら道から夫婦池公園、笛田公園と歩いた。鎌倉山は久しぶりに訪れたのだが、桜の木の数が少ないのに驚いた。並木としてもっとたくさんあった記憶があるのだが。むしろ川の堰堤の桜並木の方が見栄えがよい。神奈川県下の桜の見頃は、3月いっぱいでほぼ終りになろう。


     客を待つ桜の下の人力車
     咲き満ちて花の廊下や段葛
     花爛漫若宮大路段葛
     花咲いて庭静かなり法務局
     共に咲くしだれ桜と枝垂れ梅
     松並木跡に花咲く東海道
     新しき交番建てて花曇
     花冷のゴミ回収場烏をり
     爛漫の桜並木の青信号
     らい亭の蕎麦すすりつつ桜かな
     ゴイサギも桜見に来る夫婦池
     二カ所あり鎌倉山のさくら道
     園児らが整列したる花の下
     排ガスに顔しかめたる桜かな
     花曇晴れて汗かく日差かな
     咲き満ちて沈黙ふかき桜かな


  江ノ電の鉄路の脇の軒下にキビナゴ干せる腰越通り
  朝早くインターネットを覗きこむ鎌倉山の花や如何にと
  鎌倉山行きを探せるバス乗り場バスを見つけて心しづまる


 以前にご紹介したと思うが、鎌倉山には佐佐木信綱の歌碑がある。次の歌である。


  日ぐらしに見れどもあかずここにして富士は望むべし
  春の日秋の日


信綱は、大正期に鎌倉大町の村荘に滞在して読書、著作をしたことがあり、「鎌倉百首」を詠んでいる。次の歌も鎌倉山で詠まれた。


  片瀬の灯(ひ)江の島の灯(ひ)のつららきて此の山の上は
  月夜なりけり