藤の花のうた
今年は、桜の開花が例年になく早かったが、藤の花も一か月くらい早く咲いた。毎年、藤の花を詠んだ俳句、短歌を紹介しているが、時に重複する。今回はそれを避けたつもりである。
藤の花顔へ落ちくる鞍馬道 川崎展宏
常盤木を金縛りして藤の房 川崎展宏
下町の人の素顔に藤の影 川崎展宏
白藤の花にむらがる蜂の音あゆみさかりてその音はなし
佐藤佐太郎
若葉して咲ききりたるに藤の花いよいよ美しこぼれ落つなゆめ
窪田空穂
妻と来てことしは亀戸の藤を見つゆららに垂るる花のむらさき
筏井嘉一
古池のあちこちおほふ藤棚の見頃なる花やや過ぎし房
筏井嘉一
ひと夜屋根にのぼらむうとする老藤の青き蔓の手総立ちとなる
葛原妙子
揺れゆれて百聯白き藤の花ひびきもあらず光にあそぶ
坪野哲久
藤棚は箱舟にして花嫁がひと夜を越ゆるむらさきの波
谷井美恵子
たつぷりと藤の花房垂るる見え近付きてふと手をさし伸べぬ
宮 英子