天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

胡蝶花

大磯湘南平にて

 「しゃが」と読む。菁莪、著莪あるいは射干とも書く。アヤメ科の常緑多年草。根茎は短く横に這い、群落を形成する。 夏の季語。


     著莪のはな犬を叱りに尼の出て   川崎展宏
     あたらしき柄杓が置かれ著莪の花  川崎展宏
     山の娘は犬がお供や著莪の花   田端三千女


  胡蝶花の根に籠る蚯蚓よ夜も日もあらじけむもの夜ぞしき鳴く
                      長塚 節
  射干(ひあふぎ)の花のふふまむ頃となり山ほととぎすいまだ
  聞えず                 斎藤茂吉


  檜扇(ひあふぎ)の花は実となりさびしけど要(かなめ)ただしき
  葉のすがたあはれ           若山喜志子


  なぞへには胡蝶花(しやが)のしげみに風ふきて貧しく住みし
  去年(こぞ)のおもかげ         佐藤佐太郎


  しづかなる菁莪(しやが)ひと群(むら)を雨うちて午後の曇の
  果つる際を見つ             宮 柊二