天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

BSアサヒのTV画像より(醍醐寺)

 仏教国では仏舎利崇拝を起源とするストゥーパの築造に始まる。明治までは、わが国には仏塔だけであった。木や石を材料に建造された。塔の歌でもっとも知られているのは、次の信綱の「ゆく秋の」であろう。中学か高校の教科書にも載っているはず。


  ゆく秋の大和の国の薬師寺の塔の上なる一ひらの雲
                   佐佐木信綱
  塔(あららぎ)のそりのめでたさ西の京にわれはありけり
  此の秋の日を           佐佐木信綱


  老の眼に観る日のありぬ別所なる唐風八角三重の塔
                    窪田空穂
  蒼穹の限りもなきにそばだちて塔に無援の秋ふかまり
                    松岡裕子
  くれなゐの塔をけぶらせ降る雨を山ふかく来てひとと見てゐる
                    成瀬 有
  五重塔(あららぎ)のほとりに雲のくれてゆく今生(こんじやう)の
  こともとほきおもひに       上田三四二