天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

オルゴール

鎌倉・長谷寺近くの店にて

 18世紀にスイスの時計製作者たちによって考案された。日本には江戸末期に伝来、自鳴琴の字を当てていた。箱の中に金属板をくし形にとりつけ、それに接して多くのトゲのついた円筒を装着、円筒がゼンマイ仕掛で動くと、トゲが金属板を弾いて一定の旋律を奏でる。


  オルゴールの暗部に動く小さき歯車(ギヤ) 歯車(ギヤ)の
  めぐりの薄ら明るむ             葛原妙子


  オルゴール総身の針ゆるやかにめぐるこの音楽のはらわた
                        江畑 實
  やわらかな秋の陽ざしに奏でられ川は流れてゆくオルゴール
                        俵 万智
  オルゴール閉づれば戻るしじまありよはひは既に乱を好まず
                        大西民子
  ソレントにて買ひしオルゴールしばらく鳴り思ひかなしむ
  在りし日の笑まひ              小暮政次


  すつかりこはれてゐる だからもう壊されることなきこの
  オルゴール                 内藤 明


  オルゴールに真珠のネックレスしまひ置く妻には妻のかなしみ
  あらむ                   高橋宗伸