天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

初夏(3)

海芋(鎌倉・長谷寺にて)

 十薬の花が目立ち、紫陽花が色付き始めた。湘南も梅雨入り。円安になってきたのでバーボンやウィスキーを少し買い溜めたのだが、富山の水を紹介する番組を見ていたら、銘酒の話も出て来た。冷やして飲みたくなり、インターネットで注文した。四日ほどで送られてきた。久しぶりの日本酒なのでつい量を過ごしてしまう。


     生しらす有ります」の板軒下に
     初夏の浜に声あぐ地曳網
     十薬の匂へる石の鳥居かな
     参道に青葉の光コゲラ鳴く
     楠若葉吾妻宮の庭を掃く
     電動に草刈る音や吾妻宮
     富士を見る桜青葉の吾妻山
     葉桜に青虫垂るる吾妻山
     吾妻山木蔭に蝶々縺れ合ふ
     葉桜の参道暗き極楽寺
     孔雀啼く寺のあぢさゐ色付けり
     牛蛙孔雀と声を競ひたり
     雪解けの水にはぐくむほうれん草
     緑陰に弓引き絞る閻魔堂
     柏槙の幹治療せりほととぎす
     ゆすらうめ赤き小粒が鈴なりに
     翡翠が今朝も来ている虎頭岩
     舎利殿谷戸の緑の被さり来
     栗鼠のこゑ谷戸に石楠花咲きのこる
     この時期はバーボンやめて冷し酒
     入梅のインターネットに酒を買ふ
     幻の瀧を冷して飲み干せり
     冷奴大山豆腐もまた旨し


  ハマナスと茨交はり新たなる薔薇生まれたりみちのくの浜
  初夏の朝日のなかに光るもの砂利敷く浜の裸電球
  地曳網しまへる浜を後にして丸葉空木の花咲く山路
  あぢさゐの道をふさぎて先生は中学生らの写真撮りゐる
  昼顔と見まがふばかり長谷寺ヒルザキツキミソウの花咲く
  をさな児が「ひろつたよ」と言ひひろげたる両の手のひら
  小石が四つ


  景政が手玉にとりし力石袂石より十二貫重き
  景政が手玉にとりてすり減りし丸き石あり二十八貫
  袂石十六貫と手玉石二十八貫並べ置きたり
  今年また定家葛の花を見き「雨ニモ負ケズ」の詩碑の近くに
  柏槙の幹に治療の跡あらは人肌ならば耐えがたからむ
  崖を背に石の小仏風化せり拈華微笑にイワタバコ咲く