天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

山百合

東俣野別邸庭園にて

 ユリ科多年草。東北から近畿地方の山野の草地に自生している。鱗茎は扁球形で黄白色、苦味がなく食用になる。


  記憶には星のごとくに咲きてゐし山百合もかの夏ほどは
  咲きゐず              吉野昌夫


  ゆうらりとわれをまねける山百合の夜半の花粉に貌塗り
  つぶす               前登志夫


  真白なる山百合咲ける草叢のむせる匂ひも恋しむわれは
                    永石季世
  襤褸(つづれ)びと汗滂沱たる峠路に千の山百合揺れしならずや
                    向井毬夫
  梅雨ぐもり深き日の三枝(さいぐさ)祭(まつり)にて万と
  ささげし山百合にほふ       前川佐美雄


  さねさし相模の臺地山百合の一花(くわ)狂ひて萬の花狂ふ
                    葛原妙子