天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

彗星(2)

アイソン彗星(ハッブル宇宙望遠鏡に

 長い尾をひく大型の彗星は、古来、箒星と呼ばれ、凶事の前触れとしておそれられた。頭部の核は直径数十km以下で、主成分は、水・アンモニア・メタン・炭酸ガスなどの氷からなり、金属が混入している。彗星が太陽に近づくと表面がとけてガスや微粒子が放出される。これが光圧や太陽風に吹き飛ばされて尾をつくるのである。こうして太陽に近づくたびに物質の一部を失うので、少しずつ壊れて、数万年から数十万年で消滅する。


  人類といふものありやこの彗星一万年後にまた近づくと言ふ
                    宮地伸一
  あれはいつの春の夕べのことなりし水色美(くは)しき尾の星見しは
                    大塚布見子
  明治四十三年ハレー彗星を待ちわぶる葭子の日記口語体なり
                    秋山佐和子
  百武(ひやくたけ)彗星近づく刻を予告してめぐる宇宙の空の静まり
                    岡部桂一郎
  魂とびて彗星となる譬へ良し昼のソファに束の間を寝る
                    棟居千鶴子
  母は訊(き)く入れ歯を湯呑みに漱(すす)ぎして彗星の尾とコムニ
  スムの果て             小嵐九八郎


  彗星の尾を揺らしむるプラズマの流れすなはち太陽の風
                     山内照夫
  彗星の回帰に湧けばわれらまだニーチェのいへる末人(まつじん)
  ならず                清水正


 アイソン彗星が今年11月29日4時9分に最も太陽に近づくことが予測されている。太陽に非常に接近した彗星は、近日点通過の前後に急激に明るくなり、長く立派な尾が観測された例があったことから、アイソン彗星も立派な姿が見られるのではと期待されている。