天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

くらげ(続)

江ノ島水族館にて

 「くらげ」に当てる漢字には、水月、海月の二種類がある。マミズクラゲなどの少数例が水生で、他はすべて海生。エチゼンクラゲ、ビゼンクラゲなどは食用になる。江ノ島水族館の海月展示室はなかなかのもので、いつまで見ていても飽きない。


     沈みゆく海月みづいろとなりて消ゆ  山口青邨
     人去つて海のふくらむ水母かな    神蔵 器
     石揺れて水母の海を沈みゆく     長谷川櫂


  読むときは自然に読めど書くときは考へさせられる
  水母(くらげ)・木耳(きくらげ)     吉野昌夫


  たのしいね、みんなわらつてないてるね 海月になつて
  唄ふゆふぐれ             辰巳泰子


  白く透く体は収縮し拡張し呼吸続くる小さきくらげ
                   大河原マス美
  海月白く透きつつあはれ女性器のイデアのごとく笠ひらきたり
                     高島 裕
  底ひまでもぐらぬくらげ朧夜の左弦の月となりて浮き出づ
                     伊勢方信
  逝く春の心に沁みてくらげひとつ澄みとほる潮のなかに
  かがよふ               田中順二


  子が建てし海月の墓標ふり向けばそこより昏るる春の砂浜
                     杉山敏代